出会い系に本登録してみた

「なになに、“本登録には身分証明書を写メで撮って送ってください”か。本登録しないと全部の機能使えないみたいだし、送ってみるか。」
私は独り言を言いながら、お財布から保険証を取り出し、それを携帯電話のカメラで撮影しました。
それをサイト宛に送信すると、すぐにサイトからメールがきました。
「下記のURLから本登録を完了させてください、ね。」
最近の出会い系は手が込んでるな〜、と考えながら、私はメールの指示に従い、サイトへアクセスして本登録を終わらせました。
そして、“本登録完了!ピュア・ラブでいい出会いを!”と表示されたのを確認すると、早速サイトを見てみることにしました。
それが出会い系という名の底なし沼へと足を踏み入れた、第一歩となりました。
「ふぅん・・・掲示板ってのがあって、そこに書き込みすれば相手からメールを送ってきてくれるのか。お、プロフィール検索ってのもある。」
私は、ただなんとなく、本当にちょっとした気まぐれで、プロフィール検索の欄の名前のところに、『りょうた』と入れてみたのでした。
「さすがにりょうたって名前の人は多いな〜。ん?さらに詳細な検索?おぉー!これで住んでいる地域とか選べるのか〜。」
何気なく住んでいる地域を入れて、年齢も入れてみて、再検索してみました。
どうして、この時こんなことをしたのでしょう・・・今思い出してもあの時の自分を殴りたくなります。
余計なことはするもんじゃない、知らぬが仏という言葉があるだろう、と自分に向かって説教したい気分です。
そもそも、なぜあの時出会い系に登録しようと思ったのか、それは自分でもわかりません。
「検索結果。2名該当ね。」
一人目のりょうたさんは、もちろん私の全く知らない人でした。
そして、もう一人のりょうたの名前をクリックして、プロフィールを表示した瞬間、私は自分の目を疑いました。

出会い系サイトにアクセスしてみた

りょうたは、大学に通うために地方から出てきており、実家は新幹線でないと帰れないところにありました。
私は「わかった!なんだか大変そうだね(/ω\) 連絡待ってるよ。」と返事をして、そのまま図書館へ出かけました。
私はなんとお気楽で馬鹿だったのでしょう、りょうたを疑うということもしないで。
いや、私の中で、りょうたが裏切るはずがないと漠然と思い込んでいただけでした。
彼が本当はどんな人間だったのかを、知ろうともしていなかったのです。
図書館へ行ったものの、なんだか集中できなくて、早々に勉強を切り上げて帰ってきました。
ぼんやりと携帯電話を眺めていましたが、彼からの連絡は、その日一日ありませんでした。
私は暇だったので、ケイコに教えてもらったサイトのことをふと思い出し、そこへアクセスしてみました。
そこでやっと、私はそのピュア・ラブが出会い系サイトであるとわかったのです。
世間で、出会い系サイトの特集が組まれているニュースを放映していたり、新聞で事件を見たりなど、出会い系という文字を見かけることが増えてきていたので、その時になって初めて、自分が出会い系サイトにアクセスしていると認識しました(それほどまでに、私は世間のことに疎かったのです)。
別に利用するわけではないし、お金もかからないみたいだから、覗いてみるだけ見てみようと思い、サイトを見ていました。
「へぇ・・・、最近の出会い系ってすっごいしっかりしてるなぁ。」
初めて閲覧する出会い系サイトに、なんだか私はいけないことをしている小学生のような気分になっていました。

とりあえず仮登録してみた

前にもエクササイズを紹介してもらったケイコから教えてもらったURLだったこともあり、特に変なことはないだろうと、私は何も考えずにアクセスしました。
「ピュア・ラブ・・・?」
そのサイトは日本国内でも最大級と言われている、超有名な優良出会い系サイトだったのですが、世間に疎い(というより無知だった)私は、そのサイトがどのようなものかわからないまま、画面の案内に従って、自分のプロフィールを作成していきました。
「えーっととりあえず名前・・・チャットのハンドルネームと同じ真鈴でいいや。」
私は深く考えないまま、記入項目を埋めていきます。
「なになに、“これで仮登録は終了です。サイトからのメールに記載されたURLより本登録を行なってください”・・・なんだこれ?」
どうせブログのようなものだろうと、仮登録したのはいいけれど、めんどくさがりな私は、そのままサイトのことを放置していました。
パソコンはよく使うけれど、それほど携帯電話に固執していない私には、出会い系サイトへの登録なんぞ、すぐに忘れてしまうほどどうでもいいことでした。
そもそも、日記などのこまめに付けるようなものは、元々苦手だったので、あの有名なSNSであるmi○iや、芸能人もやっているというtwitt○rのアカウントすら持っていませんでした。
そんな私が、せっせとこまめに出会い系サイトにアクセスし、男性を漁るようになるとは、その当時は思いもしませんでした。
そして、時間は流れていき、私は短大に入学しました。

怪しいりょうた

しかし、楽しかったりょうたとの交際は、ある時、あっさりと終焉を迎えます。
私の出会い系狂いとなる歯車が、少しずつ動き始めていたのです。
付き合って約半年、秋が終わりかけ冬へとなりつつある金曜日、私は短大からの帰り、いつものようにりょうたにメールを送りました。
その週末は、一緒に勉強する予定だったので「明日の土曜は、お昼に何食べようか?」といった内容でした。
いつもならすぐに返事がくるはずなのに、その日は電車に乗っても、家に着いても一向に返信がきません。
私は不安になり、「どうしたの?何かあった?」とメールしたり、電話をかけてみたりしましたが、その日、彼からの返事はありませんでした。
次の日、私は寝不足の目をこすりながら、携帯電話を見ると、メールの受信ランプと、着信のあったことをしめすランプが点滅しているのに気がつきました。
それは、もちろんりょうたからでした。
電話は、私が寝落ちしてしまった後と思われる、深夜の時間帯にかかっていました。
そして、メールの内容ですが、
「ごめん、ケータイ友達の家に忘れてたから、連絡できなかった。m(_ _;)m あと、土曜は急用で図書館行けなくなったんだ。ごめんね。」
と、書かれていました。
私は、そんな日もあるだろうと「おはよう(*^o^*) そっか、仕方ないね。明日は来れるでしょ??」と返事をし、図書館へ行く準備を始めました。
朝ごはんを食べ、部屋で服を着替えていると、携帯電話のランプがチカチカと光っています。
りょうたからのメールでした。
「日曜も行けないかも。実は、実家から急に帰ってこいって言われてさ。。。また落ち着いたら連絡するから。」
このメールの後も、りょうたは出会い系で知り合った女と会っていたなんて、あれほど出会い系を憎み、そして彼女として屈辱を味わったことなんて、なかったかもしれません。

りょうたと付き合う!!

短大生活にも慣れていき、この頃から私は男性から声をかけられることがどんどん増えていきました。
周りがキレイな人ばかりなので、私も知らず知らずの内に洗練されていったのでしょう(私の通っていた短大は、特にキレイな人が多かったように感じます)。
短大への行き帰りに駅で声をかけられたり、ビラ配りしているお兄さんに呼び止められたりなど、ナンパされた回数は計り知れません。
また、その頃始めたレストランでのウェイトレスのアルバイトでも、バイト中に男性から声をかけられることが多々ありました。
私は、自分が男ウケするタイプであると自覚し始めていました。
中学の頃の、あの地味だった面影はどこにもありません。
私は、ナンパされる度に、女としての自信をどんどんつけていったのです。
この自信が、出会い系サイトでも功を奏するということを知るのは、まだ先の話です。
そんな折に、オフ会で出会ったりょうたから告白されて付き合うことになったのです。
それは、5月のことでした。
オフ会で出会ったのが2月、知り合って3ヶ月目にして、私達はカップルとなれたのでした。
彼とはオフ会の日以来、毎日メールをしていたし、予定があれば二人で勉強したり、映画を観に行ったりしていたので、私は彼が告白してくれるのを待っていたようなものでした。
私は、初めての彼氏ができて、すっかり舞い上がっていました。
ケイコに教えてもらった出会い系のことは、忘却の彼方へ飛んでいっていました。
友達や両親にまで言いまくり、私はりょうたと結婚するのだと、言いふらしていました。
彼と付き合い始めて1ヶ月で、私達はめでたく肉体的にも結ばれました。
私は、これで彼が完全に私のものとなったのだ、と勝手に思い込んでいました。
ときどき喧嘩もしつつ、出会い系のことなどすっかり忘れて、りょうたとは順調に交際を続けていました。

まさかの裏切り発覚

「なに・・・これ・・・。」
そのりょうたという人物は、紛れもなく私の彼氏であるりょうたでした。
生年月日、出身地、住んでいる地域、職業など、彼のデータは全て私が知っているりょうたのものと一致していました。
そして、ダメ押しの証拠となったのは、彼が設定していた自分のプロフィール写真です。
そこには、私と一緒に撮ったプリクラが載せてありました。
私の顔はモザイクで隠してありましたが、それを見た瞬間、私の脳は完全にフリーズしていました。
こんなにわかりやすい証拠をわざわざ出会い系に載せていたなんて、彼は一体何を考えていたのでしょう。
口の中がカラカラになり、手足が冷たくなり震え始めました。
怒りなのか、悲しみなのかわからない気持ちが胸の奥からフツフツと湧き上がってきます。
なぜ出会い系に登録なんてしてるのか、どうしてこんなものを使っているのか、いつから利用していたのかなど、次々に疑問が湧いては、動かない私の頭の中をぐるぐる回りました。
見たくないけれど、指が勝手に動いてしまう。
私は、震える指で、りょうたの掲示板に投稿したメッセージをクリックしました。
☆りょうた☆『誰か癒して゚(゚´Д`゚)゚ 土曜日誰か遊ぼうよ☆最近勉強ばっかりで、全然息抜き出来てなーい!誰か助けて↓↓ついでに下の息抜きもお願いしたいな(笑)』
今見たメッセージを頭が理解するのを拒否しているような感覚に陥りました。
そこは間違いなく出会い系サイトで、自分の彼氏はそこへ登録しメッセージまで残している・・・私はめまいを起こしそうになりながらも、何とか意識を保ち、他のメッセージをクリックしました。
そして、それらのメッセージに、私は完全に打ちのめされてしまいます。